今日のおサンポも、半分は休憩時間の菊千代であります。

さて、昨日は、菊千代のお気に入りの川原についてご報告いたしましたが、
今日は、そこで起きた恐怖体験のお話です。
お付き合いいただけたら、嬉しいです。
菊千代が3歳ぐらいまで、
かあちゃんは、平日の夕方サンポも
川原に行ったり、埠頭にある公園に行ったり、
出来るだけたくさんの経験をさせて、菊千代を器の大きな犬にしようと、
頑張っていたのでありました。
(散歩の時間の長さと、犬の器との間の相関関係は、菊千代では全く
実証されませんでしたが。)
注:以下の写真はすべてイメージ写真。川原で遊ぶ当時の菊千代でございます。
(若いです。)



そんな平日のある夕暮れ時のこと・・・
かあちゃんと菊千代は川原に二人っきりでおりました。

今にも雨が降り出しそうな曇天の寒々しい日でしたので、
あんな広い川原であるというのに、我々以外、人っ子一人いませんでした。

この広い野原いっぱい、咲く花を~、

ひと~つ残~らず、あなたにあげる~

ってな感じで、鼻歌まじりに、
菊千代とグラウンドの真ん中あたりでボール遊びをしていた時、

ふと、菊千代の動きが止まりまして、
見上げたその視線の遥か先、堤防の上に何か黒い点が見えました。
黒い点がゆらゆらと堤防を下りてきて、グラウンドの中に入って来たところで、
その黒い点が、一匹の犬であることがわかりました。
いくら見渡しても、人影はなく、
迷い犬なのか、それとも、近所の飼い犬でいつも自由に散歩しているのか・・・
そんなことをぼんやりと考えている間に、
その犬は、軽快な足取りでどんどん我々に向かって近づいて来たのでありました。
そして、程なくして、
その犬が大きなジャーマンシェパードの男の子であることがはっきりしました。
かあちゃんは最悪の事態を覚悟しました。
その子が菊千代を獲物と認識することを。
もしくは、無邪気に遊ぼうとしていても、
近くに来られたら、菊千代がパニックを起こし、
売られた喧嘩をその子が買ってしまった時に起こる乱闘を。
さて、かあちゃんはその乱闘を治めることができるのか・・・
いや、
できるわけがな~い。だからと言って、そうなる前に、菊千代と走って逃げることも無理。
相手はジャーマンシェパードです。
助けを求めようにも、見渡す限り、誰もいませんし、
警察に電話をしたところで、
おまわりさんが駆けつけてくれる間に、事は済んでしまっていることでしょう。
つまり、絶体絶命か?
どうする、オレ?・・・って感じでしたよ。
とにかく、近づけてはいけない。
そのためには、毅然とした態度で接近を禁じなければならない。
そう思ったかあちゃんの行動は?
菊千代にフセをさせて、その上に四つん這いになり、
“犬”になる事でありました。
四つん這いになったまま、
出来る限りの低い大きな声を出し、殺気をみなぎらせ、
「待て!」と「いけない!」を繰り返しました。
もしかすると、英語しかわからないかも・・・なんて思い、
「stop!」と「No!」を入れたりもしましたが、
もちろん、“唸り声”も入れておりました。
その子は、
かあちゃんが四つん這いになったとたんに、表情を硬くし、
歩調を緩めて、弧を描くようにじわりじわりと近づくようになりましたが、
5、6メートル手前のところで、ふっと踵を返して行ってしまいました。
一方、かあちゃんは、
遠くなっていくジャーマンシェパードの後ろ姿が、
川原の先で見えなくなるまで、
その体勢を崩すことができず、
完全に見えなくなってからしばらくして、腰が抜けてしまいましたよ。
さすがにジャーマンシェパードですから、
きちんとコマンドも入っていたのでしょう。
表情も品がありましたし、
きっと、良い子だったのだと思います。
本当は、怖がっていないで、保護すべきだったかもしれません。
大きさや種類の区別無く、犬猫たちを可愛いと思っていたはずなのに・・・
腑甲斐ないなあと思います。
去って行くときの寂しそうな顔・・・・・
あの子はあれからどうしただろうと、今でも思います。
遊んでいる柴犬に無邪気に近づいてみたところ、
変なおばちゃんが、いきなり四つん這いになって、
自分に唸ってくる・・・・・
“なんか、こわっ” と思ったでしょうね。
さて、その間、
菊千代はどうしていたかというと・・・

ずーっと、かあちゃんのお腹の下でフセのままでおりました。

ガウリ犬の菊千代が、
声ひとつあげずに、身動きひとつせず。
動物って、本当に危機が迫ると、
物陰に隠れて、気配を消すんだなと思いました。

菊千代の意外な面が垣間見られた体験でもありました。